ヒューベリオンさんのエンジン換装(ターボ化)レポート



<エンジン本体組立編>
ボアアップ等の加工が施されてロールアウトされてきた
ルネッサ用SR20改です<SR22DET>。
エンジンの内部は綺麗に研磨加工が施されており、
外側の本体もある程度磨きがかけられています。
オーバーホールされ、状態は新品のエンジンと同等です。

私のエンジンより先行して上がってきたS15の
エンジンがあり、一部記録を収め切れなかった部分を
代わりに使用させてもらっている写真がありますが、
エンジンが縦置き、横置きの違いがあるだけで、
2.2L化など仕様は全く同じです。中身の状態や
作業は同じであると考えて頂ければと思います。
クランクシャフト部に施された干渉防止の加工です。
排気量が2.0L→2.2L化されたことに伴い、
ストローク量が増えた分、エンジン本体とクランクが
干渉する可能性がある為、本体の一部を薄く削って、
干渉しないよう、クリアランスを増やしています。
クランク本体・コンロッド・クランクシャフトは
HKSの2.2Lキット。WPC加工が施された
鍛造の軽量かつ耐久性に優れたパーツです。
IN側のポート研磨後の状態です。
手で触ると本当にツルツルの状態です。
SRエンジンはIN・EX共この部分の初期状態が
結構ザラザラとバリが残った荒い作りになっていて、
磨くのにかなり時間がかかるそうです。
IN・EX合計で8箇所の磨き作業はショップの
社長が行ったものですが、8箇所全てをこのような
状態に仕上げるのに1日半かかったそうです。
単純計算でも1箇所を仕上げるのに2時間はかかる
計算になります。サンドペーパーにより仕上げて
ありますが、究極はゴムを使った鏡面仕上げです。
ポート研磨前の状態です。写真はKA24のIN。
奥にバルブが見えます。エンジン外装やクーラントの
取込吐出口に比べればかなり綺麗に凸凹が慣らされて
いるものの、こんな風に表面がザラついた状態になって
いるのがノーマルの状態です。この僅かな凸凹でも
パワーを上げれば上げるほど大きな抵抗になり、
吸排気の効率に影響を及ぼしてしまうと言うわけです。
組立前のヘッドの状態です。
バルブの先端が緑色になっているのはWako’sの
ペーストが塗られている為です。
バルブは摺り合わせの作業も完了済みです。
これからバルブスプリングやカムなど主要なヘッドの
部品を組み込んでいきます。
HKSのSR20用バルブスプリングです。
スプリング本体の原メーカーはバルブスプリングの
シェア世界一の神戸製鋼所ではないかと思われます。
16バルブですので1気筒に4つずつ。
合計で16個使用します。
バルブスプリングを各バルブにセットしていきます。
スプリングにも接触面にペーストを塗っておきます。
バルブスプリングは向きがあって重たい方が下に
なります。区別が付くようにスプリングには下側に
白くマーキングが施されています。
リテーナーと言われるパーツをスプリングに組んだ
後の状態です。チタン製の超軽量リテーナーという
ものもあるらしいのですが、死ぬほど高いそうです。
(参考ですがチタン製のバルブは1個3万円超です。
 16バルブと言うことはこれが16個必要なので、
 バルブだけで約50万円にもなっちゃいます^^;)
HKSの純正より1割軽量化されたものを使用。
これも各バルブごとに1つ必要になります。
ガイドと言われるパーツです。純正パーツを使用。
とても小さいパーツなので無くならないよう、
パーツ入れ代わりに茶漉し(笑)に入れています。
各バルブの片側にのみ使用します。
ガイドを取り付けた状態です。
写真の状態はまだリテーナー・バルブスプリング
ガイドとバルブ本体が固定されていませんので、
この後、固定する工程に入ります。
バルブコッターと言うバルブとバルブスプリング、
リテーナー、ガイド等を固定するパーツです。
こちらも純正品。5o程度の大変小さい部品です。
オイルまみれになっているのはあらかじめ、
エンジンオイルに浸して馴染ませている為です。
バルブ一つにつき2個、合計32個使用します。
バルブコッターをリテーナーの真ん中に開いた穴から
2個入れた後にこの器具で固定します。リフターで
リテーナーの頭を押さえた状態でバルブスプリングを
押し込み、バルブの構成パーツ全体を固定します。
ダイヤルインジケーターと言うバルブヘッドの位置
(沈み量)を測る器具です。写真のように3本足に
なっており、写真だと右足をラッシュアジャスターが
入る場所に入れ、真ん中で高さを調整。左側の細い
足をバルブの先端部分に当てて上死点を計測します。
100分の1oまで計測できる精密な計測器です。
インジケーターの計測結果をメモしていきます。
IN側8本、偶数番にガイドが装着、
EX側8本、奇数番にガイドが装着、
と言った取り付け状態もメモされています。
EXの2番の計測が終わって結果は2,95o。
残る15本についても順に計測していきます。
この計測結果を元に細かい調整が入ります。
エンジンの最下層部についているストレーナーの
各パーツは純正をそのまま使用しますので、
綺麗にブラシを使って洗っているところです。
洗浄にはエンジンオイルか灯油を使用します。
これがストレーナー部についているパーツ一式。
縦置きのSR20とストレーナーの形状が異なる他、
バッフルプレートも縦置きは右下の1枚だけなのに
対して、もう一枚バッフルプレートがあります。
形状の違いはエンジンオイルの集まり方が縦置きと
横置きで異なるためでしょう。
ストレーナー部に付着した古いエンジンオイルを、
エンジンコンディショナーで落としているところです。
溶剤で溶かした後、再度灯油を使って洗い流します。
隙間などに多少落とせずに残ってしまいますが、
後でエンジンオイルの洗浄剤が時間と共に洗い流して
くれますので、ザックリの作業です。
ストレーナーを取付けた状態です。
ストレーナーの下に取付けられたプレートは、
純正の状態だと2.2L化によりストロークUP
している為、クランクが当たってしまうので、
若干穴の大きさを加工してあります。
※写真はS15のSR22です。
 プレートが1枚しかないなどの違いがあります。
エンジンブロックの最下層になるストレーナー部を
取付けしています。ブロックの周りにシーリングを
行ってからの取り付けになります。締め付け強度が
細かく決められているので、ざっとボルトを締め、
精密計測ができる電子式トルクレンチで増し締めを
行います。
※写真はS15のSR22です。
オイルパンのシーリング作業です。
シーリングにも指定があり、3Mのシーリング剤を
使用しています。シーリングの粘度が結構高い上に、
作業も意外と細かいですので根気がいります。
ブロックにシーリング剤が付いたままにしておくと
変色してしまうので、周りに付かないように注意を
払う必要もあります。
写真はS15用。縦置きSRでサーキット走行すると
問題になるエンジンオイルの片寄りを防止する為、
社外品のオイルパンを使用しています。
(私の場合は純正を使用します)
エンジンのシリンダー部です。社長が既にここまで
組上げた後なので、パーツ計測はできませんでした。
シリンダー部分の輪はブロックの強度を保つために
“ライナー”と言う補強を施されたものです。
コストはかかりますが、ボアアップするとブロックが
薄くなる分、強度が落ちてブロック自体が変形する
ことがあるので、アルロイテでは排気量UPを行った
エンジンには必ずこの補強を施してもらっています。
ボアアップと言ってもエンジンの強度を考えると
限界があり、このようにボアによる排気量UPは僅か。
ほとんどがストロークで排気量をUPさせる方式です。
しっかりと補強を施している為、耐久性が高く、
700PS、トルク85kg/m以上、設定ブースト
2.0kgでも耐えられる仕様になっています。
私の場合はこれを420PS、トルク62kg/m、
ブースト1.0kg程度に設定しますので、
少なくともブローで壊れるなんてことはなさそうです。
エンジン分解時に廃棄となったラッシュアジャスター
(油圧式バルブ間隙補正装置)の新品です。
バルブの隙間を調整しているこのパーツ、劣化すると
エンジンからカタカタと異音が発生するようになります。
使い回しが効かない為、組上げる際は新品を使います。
ラッシュアジャスターは取付けを行う前にこのように
エンジンオイルへ浸してエア抜きを行います。
この作業を行わずに取り付けすると、一発目のエンジン
始動時にものすごい音がするそうです。
きっちりエア抜きするには寝かせて浸してはダメで、
このように縦置きする必要があります。
整備仕様書にもこの部分について注意書きがあります。
S15のように縦置きレイアウトのSRは写真のように
この位置へスターターが付くようになっています。
比較の為、参考資料として写真に納めておきました。
<エンジン分解編>の2枚目の写真(赤と青で○を
付けた写真)と比較すると取付位置が下になるのが
よくわかります。
横置きレイアウトは右上の丁度エンジンハンガーと
固定されている場所に取付位置がくるような感じです。
ここはこれで解決済みですが、エアコンプレッサー、
ドライブシャフト、パワステポンプ、オルターネーター
などの取付位置、ATとの接合部、タービンを取付する
向きなど多岐に渡ってまだ問題点が残っています。
HKSの2.2Lキット取扱説明書です。
実際のモノは私が記録に収める前にエンジンに組まれた
後だったので、記録を取れませんでしたが、証拠として
入手してきました。横置きエンジンですので、てっきり
同列のパルサー用を使うと思っていたら何と縦置き用、
つまり180SXやシルビア用を使用しています。
後で知ったのですが、パルサー用はパーツの種類が
あまり多くないそうです。意外なことにパルサーは
そういった需要が無いのだとか。
カムが組み込まれ、ヘッドカバーを被せるだけの状態に
組みあがったエンジンです。カムはIN・EXとも
TOMEIの260度。8,000回転まで余裕で
ブン回るエンジンになっています。
実質は9,000回転強まで回せるようですが、
耐久性を重視したことと、そこまで回さなくても
設定馬力・トルクが十分出せる為、敢えてマージンを
大きく取る予定です。
同じSR20とは言え、縦置きと横置きで微妙に
異なる設計。何事も無くすんなりとは行かないもので、
2.2Lキットを組み込むとヘッドカバーの内側に
カム押さえと若干当たる箇所が。僅かな干渉ですので、
カバー側を少し削って干渉しないようにしています。
前述のカバーの干渉も小加工で無事解決。
ヘッドカバーを取付けて完成のSR22です。
ヘッドカバーは腰下まで手を加えてあることが
判るようにする意味も含めてキャンディブルーに
塗装しています。エンジン内部の組立工程はここまで。
次はエンジン外装部の補機類の取付作業に入ります。

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