ヒューベリオンさんのエンジン換装(ターボ化)レポート



数々の基礎部分強化がようやく一通り出来上がった所でMyプレの
チューニング最終章、ターボ化を行うことになりました。
オーバーホールの時期に差し掛かっているKA24をそのまま使うか、
思い切って換装するかの2つの選択肢がありましたが、

(1)頑丈ではあるもののチューンのベースとするにはKA24はパーツが無く、
 全て1から作らなくてはならない。逆にSR20DETは豊富にある。

(2)SR20DETに関するノウハウをショップで大量に有している為、
 問題点が出てきても解決し易い。

(3)最高のチューニングと言われる軽量化がSR20DETなら望める。

(4)KA24は基本設計が低速のトルク重視に主眼がおかれている為、
 高出力エンジンに仕上げるのが非常に難しい。

以上のような理由から換装を行う線で決定。エンジンは大変希少な車に
なりますが「ルネッサGT」のSR20DETを使うことになりました。
エンジンがKA24と同様の横置きレイアウトであることや、U30が
ルネッサとシャーシを共用していることから、載せ換える際に一番問題点が
少ないはずと判断しました。設定の無いエンジンを載せる訳ですから後で
必ず色々な細かい部分での違いや問題点が出てきます。その問題の大きさが
軽微で少ないほどベースとして好ましくなります。
NAとターボの差こそあれ、シャーシが同じならエンジンマウントの位置や
エンジン本体が収まるかどうか。ATやスターター・オルターネーターの
取り付け位置と言った根本的な部分がクリアできる可能性が高くなります。

問題は弾数の少なさで車好きでもルネッサにターボ仕様があると言うことを
知っている人が少ないぐらい。なかなかモノ自体が見つからないだろうと、
1年半前から全国指名手配状態(爆)で探し続けておりました。
中古エンジンと言っても何でもよいというわけではなく、走行距離が5万キロ
以下であることが望ましいなど、いくつかの最低条件をクリアしていなければ
なりません。弾数の極端な少なさから最悪はパルサーGTI−Rのエンジンも
視野に入れ、こちらも条件に合致するエンジンを探しておりましたが、
パルサーの場合は弾数は合っても使い込まれてしまっているものばかりで、
どちらも条件に合致するエンジンが見つからないまま1年近くが経過しました。

「この際高くても止むを得ないのでリビルト品を使う」と検討を始めていた
矢先の昨年夏、ひょっこりと捜し求めていた<ルネッサGT>のエンジンが
北海道から出てきました。走行距離は4万2千キロ。何でも路肩から落ちて
横転したらしく、エンジンは無事だったもののボディ(屋根)がボコボコに
なってシャーシもダメージを受けてしまい、復旧不可ということで廃車に
なった車のエンジンだとか。まずはエンジンをとにかく押さえておいてもらい、
資金面等に大筋の目処がたった今年4月、いよいよプレサージュGT化計画が
発動となりました。

設定も過去にも事例が無いエンジンをスワップしようと言うのですから、
幾多の問題が待ち受けているだろうことは容易に想像できましたが、
いざやってみると問題続出の大変な手探りの作業となりました。
レポートに収めた作業記録はショップで作業を継続している都合と、
私が休みの時以外に顔を出せないことから、全て収めるのは不可能でしたが、
可能な限りを記録に納め、纏めてみました。
4つの工程+比較データ編という大変な長編レポートとなっておりますが、
多少なりとも皆様に楽しんでご覧いただければ幸いです。

皆さんの応援や支えもあって10年の歳月を経てようやく夢の帰結に
たどり着くことができました。GOプレメンバーの皆さん、並びに管理人、
こいちさんに改めて御礼を申し上げます。



<エンジン分解編>
ルネッサGTのSR20DET(以下SR20)です。
こちらはインテーク(以下“IN”)側。
北海道から出てきました。走行距離は4万2千キロ。
ルネッサGT発売からの経過年数を考えるとかなり
希少な良弾と言えます。
「実際の重さなんて量ったことね〜よ」と言う社長の
一言に体重計を持ってきて実測。
補機類(タービン等)も含めて140kgありました。
SRは軽いと言うイメージがあったので、もっと軽い
(100kg以下)ものと思っていましたが、
改めてエンジンが車の最重量パーツであることを実感。
アルミブロックでこの有様ですから頑丈一点張りの
鋳鉄製KA24は200kg近い重さだと思います。
同じくSR20のAT側。
今回の換装に当たってのまず第一関門が“赤”で○を
つけた箇所。この部分、エンジンのスターターが付く
場所になるのですが、通常のSR20は“青”で○を
付けた辺りにこの部分が設けられています。
取付け位置が全く異なりますので、この位置が違うと
いきなりNGで使えないと言うことになります。
KA24はルネッサGTのSRと同じく赤い○付近に
スターターがついておりますので、まずは第一関門は
何とかクリア。すぐ上にスロットルが見えますが、
この辺りの構造もKA24と共通点が見られました。
元々KA24はSR20のボア&ストロークアップ版。
派生型のエンジンであるよい証拠であるとも言えます。
ちゃんとエンジンの検品票が添付されておりました。
何と私のU30と同い年です。
(私の車は7月納車。4ヶ月ほど年上でした)
短期間ですが3ヶ月の保障もついているそうです。

U30プレ:U30/NU30
ルネッサ:NN30

型式番号の“30”が同じ辺り、シャーシを共用する
車であることを改めて実感させられます。
このようにエンジンを組んだり分解したりする際には
専用のハンガーに吊るして作業を行います。
ミッション側のギアを外しブロック本体とハンガーを
ボルトで固定して吊るしてあります。
排気量UP(2.0L→2.2L)のメニューが
入っておりますので、エンジンを一旦全部分解して
ボアアップしてもらうため、外注に出します。
(さすがにアルロイテでもこれはできませんので)
写真はディストリビュータを外す作業を行っています。
IN側の補機類です。インテークマニホールドや
インジェクションなどのパーツが見えます。
この中に実際には使わないパーツがあるのですが、
過去に全くもって実績が無いことをやる今回、
何が合うのか合わせに使ったりするベースとして
パーツの一つ一つが全て貴重な資料になります。
普段なら「これは廃棄」とすぐ選別にかかるところ
なのですが、今回ばかりは全部片付くまで基本的に
取っておく方針で進められています。
もちろんそのまま使うものもありますからこのように
外した部位別に箱詰めして保管しておきます。
エキゾースト(排気)側<以下“EX”>補機類です。
エキマニの他、純正タービン、アウトレットなど
ターボエンジンならではのパーツ類が見られます。
この辺りも取付け位置の確認やパーツを製作する際の
重要資料となります。
特にタービンは通常のSR20と取付け方向が逆に
なっているとの事で、エキマニの構造共々後々で
社外タービンが装着できるか、重要資料となります。
(エンジン購入に当たって重要条件の一つにこれらが
 揃っていることも条件に入っていました)
IN側の補機類を全て撤去した後の状態です。
写真真ん中下辺りにスターターが取付けられる部位が
ありますが、この部分の構造がよくわかります。
写真で右側真ん中辺りに何かの配管と繋がっていたと
思われるパイピングが見えますが、このパイピングの
後ろにクーラント(ラジエータの水)を循環させる
ウォーターポンプがあります。
S15等は縦置きですが、このSRは横置きですので、
KA24と同様こちらがボディ側になります。
EX側の補機類を全て撤去した後の状態です。
煤のついた4つの穴の場所にEXマニがついています。
ルネッサGTのSR20はタービンがEXマニの上に
付くような形でついておりました。
ショップの社長の話ではこうした部分が通常の縦置き
SR20DETと異なる構造をしているとのこと。
他にも同じSR20でも、S15などのように
ピークパワーを重視したタイプとルネッサのように
レスポンスと耐久性を重視したタイプで異なるようで、
敢えて重たい頑丈なパーツが使われていたり、
形状が微妙に異なるなどの違いがありました。
エンジンのヘッドカバーを外した状態です。
カムやバルブ、カムプーリーなどエンジンヘッド部分の
構造がよくわかります。
カムはターボと言ってもルネッサの場合はトルク重視に
振ってあると思うので、240度ぐらいでしょうか。
カム押さえのパーツには番号を、カムプーリーには
IN・EXの区分を示す文字をそれぞれ打刻して後で
どこのパーツかわかるようにして取外しを行います。
オーナーがきちんとオイル交換をやっていたようで、
想像以上に綺麗な状態でした。
同じくヘッドをプーリー側から見た状態です。
プーリーはベルト式ではなくチェーン式。
GT−Rでカムを換えた車はここをわざと剥き出しに
して中を見せたりしている人がいますが、チェーン式の
SR20はできません。ベルト式と違い切れたり、
交換する必要がなく頑丈なので、最近の車はほぼ全てが
チェーン式です。向かって左がIN、右がEXです。
ヘッド部分を本体部分と分離した状態です。
この部分はボアアップした本体と位置合わせなどの
作業が行われ、また組み立て時に組み合わせます。
本体であるシリンダー部と共にボーリング作業等の
外注に出されます。
エンジン本体部分に当たるシリンダー部です。
煤もほとんどついておらず、ピストン本体も非常に
状態がよいことから、前のオーナーは慣らしなども
きちんとやって乗っていたと思われます。
実際に「当たりエンジン」とはショップの社長談。
これを若干ボアUPしてシリンダー内部に強度を
保つための補強を施し、排気量UPの大部分は
基本的にストロークUPで稼ぐことになります。
全てのパーツを取っておくのが今回の基本方針ですが、
この写真の2つのパーツは要交換パーツであり、
ピストン系も2.2L化に伴って使えなくなるので
最初から廃棄になりました。左がウォーターポンプ。
右がラッシュアジャスターです。
(ピストンは下の計測作業を行ってから廃棄しました)
写真の2つはトラブルを避ける為、新品に交換します。
純正のピストンとコンロッドです。
これも重さを実測。重量は写真の通り1209g。
ですが4気筒とも均等ではなく、それぞれ数グラムの
誤差がありました。わずかな差ではありますが、
ここが1分間に何千回転の高速で動くことを考えると
大きな差。コストを重視する純正ゆえに微妙なズレは
仕方がないことですが、よりパワーを求めた場合には
この差がよりゼロに近いことが望ましくなります。
今回の導入するHKSの2.2Lキットはこの誤差を
均一化させた“バランス取り”と言われる処理が
施されています。パーツも大パワーに耐える強度と
軽量化を兼ねたWPC加工の鍛造品となります。
ピストンの運動を回転に換えるクランクシャフトです。
もっと軽いものだと思っていましたがずっしりと重く、
これだけで17kgもありました。
ここがATなどパワートレーン部に繋がって車を前に
進ませる動力へと変換されます。
ここもHKSの2.2L化キットになります。
エンジンブロックのシリンダー部を重量計測しました。
重さは丁度30kg。さすがはアルミブロック。
ブロック単体で見ると軽いなと思います。
ボウリングや強度維持の加工が必要になりますので、
専門の業者に外注に出して、加工を施してもらいます。
シリンダーはもちろんですが、周りのクーラント用の
穴の部分も研磨などの手が入ります。この部分に手を
入れることでノーマルのエンジンより冷却効果が
飛躍的に向上します。
エンジンの最下層にあたる部分です。
ストレーナーやオイルパンがついている部分です。
ちょっと体重計ではスケールが粗く不正確ですが、
2.5kgと言ったところでしょうか。
レース車両によく見られる“ドライサンプ方式”
(オイルポンプで強制的にエンジンオイルを循環
させる仕組み)では、ここから下の部分が無いと
言うことになります。厚みがオイルパンを含めると
15cm程度あるので、この厚み分だけエンジンの
取り付け位置を下げられるのは確かに大きいと
思います。何しろここから上に乗っている部分が
一番重たいですから。
ルネッサGTのSR20ヘッドガスケットです。
2.2L化による圧縮比変更に伴い、この部分の厚みも
変わりますので、適合を調査するために現物を残して
おいたものです。同じ横置型SRエンジンという事で
パルサーGTI−R用が流用できる可能性が最も高いと
言うことで調査した所、そのまま使えると言うことで
パルサーのガスケットを使うことになりました。
厚みがこれより厚くなります。
このガスケット、また何かの際に合わせに使うかも
と言うことで、ショップのガスケット見本の中に
永久保存で加えられました(笑)

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