ヒューベリオンさんのシーケンシャル点火方式導入記

悪夢のスロットルセンサー不良から約1年。
快調に走っていた愛車にまたも走行中にストールする不具合が発生しました。
今度の原因はクランク角センサー。ディストリビュータの中にコイルやイグナイターと
共に仕込まれているクランクのセンサーなのですが熱や経年劣化、更にはCDIによる
昇圧の負荷などが重なり、12万5千キロをオーバーした所でダウンしました。
日産車ではオルターネーターと並んで爆弾のパーツだそうで、トラブルが頻発している
とのことなので、無理をしているのによくここまで持ったと逆に褒めてやらなければ
ならないのかもしれません。

さて、またもまともに走れない状態となってしまいましたが、普通であればこれを機に
乗り換えを検討・・・となるのかもしれませんが、ようやくここまでに仕上ったプレを
手放すのはナンセンスと言うことで修理と相成りました。
同じトラブルを回避でき、かつ使ったパーツが無駄にならない方法と言うことで、
アルロイテの社長と相談して導き出された答えがフルコンピュータの王様、
HKSのF−CON V−Proを使用し、D1やJGTCなどレース車両の
テクノロジーとして使われている“シーケンシャル点火方式”。
ノーマルで直すと言う手もありましたが、先のことを考えると現状復旧は無駄な投資と
なってしまう為、先行投資をする形で修復することとなりました。

以下はレーシングテクノロジーのフィードバック、シーケンシャル点火方式の導入記です。





箱書きの特注の文字の通り、永井電子(Ultra)に
特注したシーケンシャル点火用のプラグコードです。
通常のプレ用プラグコードよりも40cm長く、
先端の端子も特殊な物が使われています。
プラグコードの端子部分拡大写真です。
通常はディストリビュータにはめ込むような端子が
使われておりますが、この端子はコイルに直接差す為、
特殊な形状をしています。滅多に使わない端子の為、
端子がメーカーで弾切れになっていて通常、
2・3日で出来上がる所、4日程度を要しました。
一見一番長い1番と一番短い4番に見えますが、
実は両方とも最も短い4番です。
40cmも延長して作ってもらってますので、
ノーマルと比較するとこのように1番と4番を
並べているように見えます。
使用するイグナイターとコイルです。
RB26DETT用。つまりGT−Rの心臓に使われて
いるものと全く同じ物です。GT−Rの心臓に使われて
いるだけあってあらゆるイグナイター、コイルの中で
最もタフで高い放電に耐える設計になっているそうです。
KA24は4気筒ですのでプラグコード1本につき、
この2つが1セットで合計4セット必要になります。
フルコンの王様、HKSのF−CON V−Proです。
ご存知の通り、あらゆるきめ細かいコンピュータの設定に
対応した最強のフルコンで、これが1基あれば車の設定の
ほぼ全てに対応ができます。ショップが設定を行うには
HKSのV−Proチューナー専用の難易度の高いテスト
に合格しないとできないようになっており、資格を持って
いないと扱えません。またプレでの前例が無いとのことで、
メーカーに各種セッティングを調査してもらい、
本来ならシルビア用として使われるケーブル(右側の青い
カプラがついた線)をプレ用に加工して使用しました。
プラグコード+コイル+イグナイターの点火系一式です。
写真のようにプラグコード1本につき、このような形で
コイルとイグナイター(コイルとイグナイターは別途、
線で繋げます)が一式になります。
今回のシーケンシャル点火方式ではV−Proにより、
これら4本を独立して制御します。
シーケンシャル点火方式はノーマルのディストリビュータ
を使用しません。変りに前述のコイルとイグナイターを
4基どこかに装着する必要がありますので、その場所を
検討しています。水がかかったりせず、かつ干渉しない
場所と言うことで、またも元バッテリーがあった空間が
役に立ちました。
できあがったシーケンシャル点火方式による配線です。
エアクリーナーの配管取りまわしを若干変更し、空いた
空間にステーを社長が自作して4基並べる形で取り付けて
あります。ノーマルのディストリビュータですが、
クランク角センサーがないとエンジンが動きませんので
交換しました。先を考えると中古で十分だったのですが、
トラブルが多発していて中古が欠品しており、止む無く
新品を使用しています。但し今後はディストリビュータの
役目はクランク角センサーを動かすだけになりますので、
今までのような負荷はかからなくなります。
シーケンシャル点火方式のメカニズム拡大写真です。
通常はディストリビュータによる4気筒一括制御ですが、
これは4気筒4制御です。1気筒ずつ制御するので負荷が
分散され、より高い放電に耐えられるようになっています。
またD1などで閉角時間延長による放電負荷に耐えられる
ことが実証されているRB26のパーツを使用することで、
V−Proで燃焼時間を延長して完全燃焼するまで高い
電圧を放電することが可能になり、結果としてパワーや
トルクが下から上まできっちり出せるようになっています。
一気に吹け上がるレスポンスの良さに加えて下から上まで
トルクとパワーがきっちりついてくるようになりました。
角度を変えて撮影したメカニズムの写真です。
将来的にはエアフロも使えなくなるので、エアフロも
これを機に潔く取っ払いました。ディストリビュータの
プラグコード用の穴はシリコンで塞いであります。
通常の車はこのディストリビュータで点火や昇圧と言った
全ての点火に関する作業を行うわけですが、構造が単純化
できてコストも押さえられる優れたメリットを持った一方で、
4気筒なら4気筒分、6気筒なら6気筒分の負荷がここに
集中する為、熱を持ちやすく、効率の面でロスを生じたり、
より強力な電圧を長時間かけたくても限界が低いなどの
弱点もあります。(パソコンのメモリーが512MB×1
よりも256MB×2の方が処理速度や効率が高いのと
理屈はほぼ同じと考えて頂ければと思います。)
そこでレースの車両ではコンピュータにより4気筒なら
4気筒分を全て独立させて制御し、負荷分散を図ると同時に
点火効率を飛躍的に高めるシーケンシャル点火方式を使って
いるわけです。実際に走ってみて確実にパワー・トルクとも
以前よりUPをしていると思います。





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