ヒューベリオンさんのフルフラットアルミディフューザー作成記



私のプレは購入から約8年経ちますが、これまでエアロパーツと言うものは
グランドエフェクターをつい最近、装着した以外は付けた事がありません。
これには、、、
(1)自宅周辺の起伏が激しく、エアロを装着するとルートが著しく制限される。
(2)ミニバンのエアロパーツはビジュアル重視で本来の機能性に欠ける。
(3)“パッ見はノーマルの羊の皮を被った狼”という自らのコンセプトに反する。

主に以上の3つの理由からでした。
エアロパーツ自体の機能を否定しておりませんので、ただ単に自分の考えや
条件にマッチするエアロが無い為、付けていなかったと言う事になります。

依然として愛車の走行性能が向上していく状況の中で、ここ最近不安になって
きたのがいわゆる空気抵抗による壁。U30型プレサージュはご存知の通り、
電池自動車のシャーシを使用している為、フロア下に無意味な電池を積載する
空間がポッカリと空いており、空力に関してはほとんど考えられていない
ような作りになっています。
車のスピードレンジが上昇していくに従って、このフロア下での乱流の発生が
挙動を乱す原因になっており、高速域からのフルブレーキング時の挙動の乱れや
走行中の浮き上がり、バタつきが発生して、不安定な状態になっていました。

何とかこの挙動の乱れを押さえられないか?考えた末にフロア下の空間を全て
ディフューザーを作成して覆い、整流してしまおうということになりました。
作成依頼先は例によってチューニングならお任せのグランドスラム・アルロイテ。
アルロイテでは過去、S2000にカーボンディフューザーをワンオフして
装着した実績があり、私のでディフューザー装着は3例目となります。
(後でわかったことですが、フルフラットディフューザーは作成の前例がなく、
 私のプレが初実績だそうです)

ディフューザーは通常、リアないしフロントだけ覆うだけでもかなりの効果が
ありますが、U30は普通の車と異なり、中央部を塞がないと全く無意味の為、
フロア下全体を覆う形で作成を依頼。3日がかりの大掛かりな作業となりました。
以下はワンオフしたフルフラットアルミディフューザーの作成記録です。




1.取り付け前

取り付け前の状態です。
中央部の電池を積む空間の後ろに巨大な燃料タンク、
そしてリアの足回りと続き、最後に応急タイヤ。
ミニバン全盛のこのご時世でもこれほど空力を無視した
作りも珍しいです。
2.フロントアンダーカバー

U30のフロントアンダーカバーです。
今回は前から後ろまでフロア全体を覆うことになるので、
純正のアンダーカバーは撤去、廃棄となりました。
また写真に収めていませんが、前後左右に計4箇所ついて
いた泥除けも空気抵抗になってしまうため撤去。
装着して3ヶ月のグランドエフェクターも撤去しました。
3.応急タイヤ&燃料タンクカバー

こちらも今回、撤去&廃棄となった床下の収納物とパーツ。
応急タイヤは16インチですが、Myプレのフロントには
入らないので、積んでいても無意味の為、これを機に廃棄。
(この応急タイヤ、ものすごく重いです)
プレート状のものは燃料タンクの前についている飛び石
防御用のカバーです。ディフューザーで燃料タンクごと
覆うことになるため、付けていても邪魔になるだけで
意味がないのと、少しでも軽量化する為に撤去しました。
4.採寸作業〜その1

ディフューザーの装着するのに適した箇所を
探して採寸し、全体の青写真を描いている所です。
U30は一番外側のシャーシの内側に更に電池を
積載する為のシャーシがもう一つ通る2重構造に
なっています。ディフューザー用のアルミプレートの
幅と電池積載用のシャーシの幅がほぼ同じであった為、
ここを活用することとして採寸しています。
5.採寸作業〜その2

こちらはフロントのシャーシ部分の採寸です。
この部分は架台を設置する箇所にも乏しく、
また駆動・稼動部分が多い箇所である為、
いかに干渉しないようにかつなるべく全体を覆うか?
構想するのに最も時間を要した箇所でした。
6.架台作成〜その1

取付け位置の構想が決まり、架台を作成しています。
架台は当然ながら社長の自作。“アングル”と呼ばれる
ステンレスのL字型ステーをこのように糸ノコで採寸した
長さにカットし、加工して作っていきます。
ステーは厚さ2o。厚みがあるのでかなり丈夫です。
7.架台作成〜その2

加工した後をベルトサンダーを使って整形しています。
出っ張った箇所の削りに、穴をあけた後の養生に、
プレートや架台の整形に、このベルトサンダーは今回、
大活躍で、一日中唸ってました。
セラミックベルトでかなり丈夫なものを使っていますが、
使用頻度が高く、4本ものベルトを必要としました。
8.フロント架台(完成)

フロント部分のディフューザーを装着する架台の
完成状態です。フロントのシャーシ部分に1箇所、
ATオイルパン前に1箇所、そしてフロントメンバー
のところに1箇所の合計3箇所になります。
一番手前のシャーシ部分の架台はエンジン始動や
変速時にエンジンが動いて蛇腹の箇所が干渉をして
しまう為、当たらないようにカットがされています。
9.フロント作成作業

架台の位置が決まったので、プレートを型取りして、
取り付ける穴の位置などを決めています。
まだこの状態は様子見の段階で、この後7〜8回、
このように仮止めをしては外してを繰り返し、
型合わせを行って作成していきます。
10.加工作業

取り付け位置が決まると、その場所に穴を開けて
いきます。一発勝負なので上記の型合わせの脱着を
何度も繰り返し、ベストと思われる位置取りが
決まってからの作業になります。
プレートはアルミ製なのでよかったのですが、
架台に使用したアングルは軽量で硬いステンレス
だった為、ドリルの刃が何本かダメになるほどでした。
11.フロント(完成)〜その1

完成したフロントのディフューザーです。
干渉したりする箇所をどうやって避けるかなど、
作成に当たって障害になる部分が多い所であった為、
ここを1箇所作るだけで丸々1日かかりました。
ネジ止めなので、いつでも脱着可能です。
12.フロント(完成)〜その2

同じくフロントディフューザーを真下から撮影した
ものです。4箇所開いているサービスホールは、
左右の楕円のものが牽引フックの牽引箇所、
左上の大きな円型の穴がオイルエレメント、
シャーシ手前下の穴がエンジンオイルのドレンです。
タイヤハウスの部分もタイヤに干渉しないよう、
カットがされています。
13.2枚目位置取り

最も大きなプレートを使うことになった2枚目の
位置取り作業風景です。この部分、プレートの長さが
長くなる為、左右のアングルで吊るすだけでは固定力が
不足することが判った為、縦にもアングルが入っています。
このような構造になった結果、ロアアームバーや
タワーバーほどではないにしても、フロア下全体に
補強が入ったことになり、ヨレ易いフロア下のボディ
剛性強化にもなりました。
14.3枚目位置取り

ほぼ燃料タンクのある部分を覆う形になる3枚目の
位置取り作業風景です。左側が斜めにカットされて
いるのは、ここにリアブレーキのラインが通っており、
干渉しないようにするために施された処置です。
奥に2枚目が装着された状態で写っていますが、
大きなサービスホールはMyプレの床下に移設した
バッテリーの装着箇所です。
(この後、脱着可能なプレートで穴を塞ぎます)
15.リア取り付け架台

リアディフューザー(4枚目)の取り付けアングルの
一つがこれ。わざとこのように下駄を履かせて完全に
密着させて装着せず、浮かせて付けることで、
ディフューザー内部に溜まった空気の逃げ道を作り、
その流れを利用して更にダウンフォースを稼ぎます。
16.リア整流板作成〜その1

よくディフューザーのリアに見られる縦の整流板を
作成している所です。プレス機を使い整流板の形状を
整えていきます。
17.リア整流板作成〜その2

完成した整流板です。
これをリアディフューザーに4枚、リベット止めにて
装着しました。この整流板、さほど大きくないですが、
完成後のテスト走行でこれがちゃんと効いている事が
証明されました。
18.リア整流板〜その1

整流板を4枚とも装着したリアのディフューザーです。
リアはマフラーのところで左右2枚に分けてあります。
整流板は等間隔になるように取り付け。
1箇所ある円形のサービスホールは牽引フック用の
サービスホールです。
19.リア整流板〜その2

同じくリアディフューザーを真後ろから見た状態です。
ディフューザーの特性上、若干長めに作られていて、
バンパーの下の部分からは多少はみ出ていますが、
全長の枠内に収まっているので、車検にも問題は全く
ありません。リアビューに関して下に降ろした状態でも、
わかる人間が見れば何をやっているか一発でわかります。
外見を変えないというコンセプトからちょっと外れて
しまった感がないでもありませんが。
20.完成(全体)

完成したディフューザー全体です。
ポルシェ張りに床下はフルフラットになりました。
シャーシ中央部の左右に塞いでいない空間がありますが、
これは逆に意図的に塞がなかったもの。
この部分、フロントタイヤのタイヤハウスから入った
空気の流れがここを通ってリアに抜けるため、
塞ぐと空気の逃げ道が無くなってしまうばかりか、
フロア下が平らになり過ぎて逆に浮き上がってしまい、
ダウンフォースが稼げなくなる為、空気の逃げ道として
意図的に塞がなかったもの。タイヤハウスから入った
空気は左右の塞いでいない空間からリアに抜け、
真正面から入った空気はディフューザーの上下から
抜けて強力なダウンフォースを発生させる仕組みです。




装着後のテスト走行での結果です。
テスト走行の状況ですが天候:雨、路面状況:ウェット、更に強風という
効果測定にはおあつらえ向きの状況でした。テストコースは某海岸沿いを走る高速。
途中には突風が吹き荒れる橋があります。

交通量などに留意しつつ、最大○70km/hまでテストを行いました。
まず最大の驚くべき点が圧倒的な直進安定性。テスト時、橋の上で12mの突風が
吹いており、通常であればハンドルを取られて吹っ飛ばされるところですが、
何と○40km/hの速度でハンドルから手を離して真っ直ぐ走ってしまいました。
もちろん握っていても風が煽られていることを全く感じさせません。
周りを見れば乗用車レベルでも煽られてフラフラしているような状態。
この安定感は驚くべきものです。

もう一つの驚くべき点は、強力なダウンフォースにより地面に押し付けられる為、
路面状況がウェットであるにも関わらず、これまでのドライの路面の時と同じ速度で
コーナーに進入してもグリップを失うことなく曲がってしまいました。
この時の速度は装着前であればオーバースピードであるにも関わらずです。
恐らく路面がドライであるなら以前より更に1〜2割増しぐらいの速度で進入しても
曲がってしまうかもしれません。

また整流効果がバッチリであったのも雨であったがゆえにはっきりとわかりました。
通常、雨の道路を走ればフロア下はずぶ濡れになってしまいます。
これはディフューザーをつけても変わらない現象ですが、高速走行後にフロア下の
ディフューザーを触ってみると何と全く濡れていませんでした。
つまり全部空気の流れに吹き飛ばされて飛んでいってしまったわけです。
もちろん車のボディは激しい雨でずぶ濡れ。このギャップと言うより効果の程に
驚きました。変わるもんだなとつくづく思ったテスト結果でした。






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